甲状腺疾患における禁忌薬
薬のなかには、甲状腺疾患に悪いものがあります。
たとえば、精神刺激薬のリタリンや、排尿障害などに用いるベサコリン、低血圧治療薬のメトリジンやリズミック。
これらは心臓の自律神経系(交感神経または副交感神経)に作用し 動悸や頻脈症状を悪化させるため、
甲状腺機能亢進症のある人は使用禁止です。
ベサコリンにおいては、心房細動という重い不整脈の危険性も指摘されています。
リタリンのような絶対的な禁忌薬は少ないのですが、注意が必要な薬はほかにもたくさんあります。
よく処方されるのは、抗コリン作用をもつ三環系抗うつ薬、腹痛などに用いる鎮痙薬、頻尿や尿失禁を治療する
過活動膀胱治療薬、喘息に用いる気管支拡張薬などです。これらにも交感神経刺激作用があるため、
頻脈など甲状腺機能亢進にともなう諸症状を助長する可能性があります。甲状腺機能亢進症のある人は、
服用にさいし十分注意しなければなりません。
逆に、気分安定薬のリーマスは、甲状腺機能の低下をまねき、甲状腺機能低下症を悪化させるおそれがあります。
また、抗不整脈薬のアンカロンは、甲状腺ホルモンの生合成と代謝に影響を及ぼし、甲状腺機能検査値に異常をきたします。
処方機会は少ないのですが、これら2つの薬については、甲状腺機能亢進症のある人だけでなく、
低下症の人も要注意といえるでしょう。(お薬110番より)

分類 薬品 成分 禁忌 備考
精神刺激薬 リタリン メチルフェニデート 甲状腺機能亢進 循環器系に影響
ベタナミン ペモリン 甲状腺機能亢進
自律神経薬 ベサコリン ベタネコール 甲状腺機能亢進症 心房細動の危険性を増加
アボビス アクラトニウム 甲状腺機能亢進症 心房細動を誘発又は悪化
スルカイン 炭酸カルシウム、他 甲状腺機能低下症
副甲状腺機能亢進症
症状悪化
※炭酸カルシウムを
含有しないスルカイン錠は
対象外
降圧薬 アプレゾリン ヒドララジン 高度の頻脈及び
高心拍出性心不全
(甲状腺中毒症等)
症状悪化
昇圧薬 エホチール エチレフリン 甲状腺機能亢進症 心悸亢進、
頻脈等の症状悪化
メトリジン ミドドリン 甲状腺機能亢進症 症状悪化
リズミック アメジニウム 甲状腺機能亢進症 症状悪化
高リン血症治療薬 カルタン 炭酸カルシウム 甲状腺機能低下症 症状悪化
健胃薬、制酸薬
(炭酸カルシウム含有)
S・M散 炭酸カルシウム、他 甲状腺機能低下症
副甲状腺機能亢進症
症状悪化
炭酸カルシウム 炭酸カルシウム 甲状腺機能低下症
副甲状腺機能亢進症
ホルモン薬 メサルモン-F 甲状腺末、他 甲状腺機能亢進症 症状悪化
切迫流・早産治療薬 ウテメリン リトドリン 重篤な甲状腺機能亢進症 症状悪化

甲状腺疾患に関する禁忌項目がある医薬品リスト
神経系用剤(含む別用途)
ベタナミン錠(ペモリン)
リタリン(塩酸メチルフェニデート)
自律神経剤
アボビス(ナパジシル酸アクラトニウム)
スルカイン顆粒(スルカイン(製)
ベサコリン散(塩化ベタネコール)
強心剤
エホチール錠(塩酸エチレフリン)
降圧剤
アプレゾリン(塩酸ヒドララジン)
エシドライ(レセルピン・塩酸ヒドララジン・ヒドロクロロチアジド)
カドラール錠(カドララジン)
血管収縮剤
メトリジン錠(塩酸ミドドリン)
他の循環器官用薬
カルタン(沈降炭酸カルシウム)
リズミック錠(メチル硫酸アメジニウム)
消化性潰瘍用剤
キャベジンUコーワ散(キャベジンU(製)
健胃消化剤
FK散(複合健胃散)
KM散(複合健胃散)
M・M散(複合健胃散)
MP散(複合健胃散(ロートX含有)
NIM散(複合健胃散)
OM散2号(複合健胃散)
S・M散(複合健胃散)
TM散(複合健胃散)
YM散(複合健胃散)
エヌ・エス散(複合健胃散)
ケーテー末2号(複合健胃散)
つくしA・M散(複合健胃散)
ピーマーゲン散(複合健胃散)
マナミンTM散(複合健胃散)
モハン胃腸薬A(複合健胃散(ロートX含有)
大原胃腸薬(散)(複合健胃散)
制酸剤
炭カル錠(沈降炭酸カルシウム(錠)
沈降炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウム)
混合ホルモン
メサルモン−F錠(メサルモン-F(製)
他の泌尿生殖器官、肛門用薬
ウテメリン(塩酸リトドリン)

2007/7/7

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